診療紹介

 徳島県は、東部に比べて南部や西部との医療格差が大きいことが近年の課題となっています。

 県南部(特に海部地域)は過去、急性期脳卒中を専門的に診療できる医療機関が無かったことから地域内で発症した脳卒中患者は症状の重篤性に関わらず県中央部までの搬送を余儀なくされていました。
 2011年(平成23年)に地域脳神経外科診療部が開設されたことにより、(それまで週1回のみであった)外来診療が毎日可能となりました。
 これにより、脳卒中患者をはじめ脳神経外科疾患を24時間受け入れるだけでなく、リハビリなどの機能回復目的で慢性期患者の受け入れも今まで以上に可能になり、地域に根差した診療が行えるものと考えています。
 
 県西部にはかねてから徳島県立三好病院で脳神経外科専門医による診療ができる体制があります。しかし24時間365日対応できる体制とは言いがたく、徳島県立三好病院の常勤医師の負担が大きくなっているのが現状です。
 2018年(平成30年)からは地域脳神経外科診療部のスタッフが徳島県立三好病院で週1回の外来診療を行っており、県西部の脳神経外科診療の充実を図っています。

◆診療体制◆
特任教授(併任)、特任講師、特任助教の計3名の医師で構成されています。

◆診療方針◆
①急性期脳梗塞患者に対してのt-PA治療・血管内治療
現在、発症後4.5時間以内であれば急性期脳梗塞に対してt-PAの静脈内投与を行う必要が高いとされる。加えて血管内治療(血栓回収療法など)も加えることが、日本のみならず世界的に標準的治療になっている。
徳島県立海部病院ならびに三好病院での検査・画像診断・病棟管理の整備を行い県中央部の基幹病院と同様のt-PA治療・血管内治療が行えるようにする。

②急性期重症患者のトリアージ
急性期脳卒中、頭部外傷に関して院内医師と協力してトリアージを行い、クモ膜下出血のような手術難易度の高い外科的治療が必要な患者のみ県中央部基幹病院へ搬送する。すなわち海部病院で治療可能な患者と急性期外科的治療が必要な患者を判断する。これにより救急隊の海部郡外搬送の頻度が減少し救急隊の負担軽減、さらには患者やその家族の負担軽減につながることが予想される。

③脳神経手術の実施
県南部・県西部には高齢者が多く居住していることから他地域に比べて慢性硬膜下血腫の発生頻度が高い。手術は局所麻酔下で行えることから手術器具を整備して簡単な脳神経手術を行えるようにする。

④慢性期病棟の充実
県南部・県西部には慢性期脳卒中患者のリハビリを行える施設が十分でない。このために居住地区を離れて県中央部で長期入院を余儀なくされる場合があり患者家族の負担が大きくなっている。この問題の解消のために海部病院のリハビリテーション部門の充実を図り、郡内介護施設・医療機関と協力して慢性期患者の環境改善を行う。

⑤地域の医療機関や医療情報ネットワークのIT化
現場で働く医師の負担軽減のために徳島県内ネットワークを構築する。そして県中央部基幹病院との遠隔医療ネットワークを整備・構築する。
海部病院を県南部の拠点病院として周辺の診療所、医院、病院とネットワークを構築してこれにより医療過疎地区でも正確で適切な診断と治療に貢献できるようにする。

スタッフ紹介