医療上の事故等公表に関する指針

平成25年10月1日
徳島大学病院

1.本指針の目的

大学病院には、質の高い医療の提供のみならず、医療従事者の育成及び新たな診断・治療方法の確立による臨床医学の発展の推進が求められている。
これらの実践には、患者側の視点に立った安全性の高い医療の提供が不可欠である。
本院においては、安全管理体制の確立のために様々な取り組みを進めているが、医療上の事故等が発生した場合には、社会に対してその事実や改善策を公表することにより、医療安全管理を徹底するだけでなく、他の医療機関での再発防止に資するとともに、医療の透明性を高め、国民からの信頼性の向上に資することが重要である。
本指針では、医療上の事故等が発生した場合の公表に関して一定の基準を示すことにより、上記のような社会的責務を果たすことを目的としている。

2.本指針における用語

本指針で用いられる用語は次のとおりである。

(1)医療上の事故等

疾病そのものではなく、本院において発生した患者の有害な事象を言い、医療行為や管理上の過失の有無は問わない。
すなわち、「医療上の事故等」とはインシデントのうち有害事象をいう。
また、合併症及び医薬品による副作用や医療材料・機器による不具合を含む。

(2)ヒヤリ・ハット

患者に被害が発生することがなかったが、日常診療の現場で、“ヒヤリ”としたり“ハッ”としたりした出来事を言う。
具体的には、ある医療行為が、

  • 患者には実施されなかったが、仮に実施されたとすれば、何らかの被害が予測される場合、
  • 患者に実施されたが、結果的に被害がなく、また、その後も観察も不要であった場合等を指す。

(3)合併症

医療行為に際して二次的に発生し、患者に影響を及ぼす事象を言う。
なお、合併症には予期できるものと予期できないものとがある。

3.公表する医療上の事故等の範囲及び方法

公表する医療上の事故等の範囲及び方法については、下記の要領によるものとする。(別表1参照)

(1)「明らかに誤った医療行為又は管理」に起因して、患者が死亡し、若しくは患者に障害が残った事例又は濃厚な処置若しくは治療を要した事例。

  • 患者死亡、又は重篤で恒久的な障害が残存したもの。
    医療上の事故等の発生後又は覚知後、可及的速やかに公表する。
    さらに、調査委員会で事故原因等を調査した後、その概要、原因及び改善策を本院のホームページに掲載する等により公表する。
  • 一過性に、濃厚な処置又は治療を要したもの。
    リスクマネジメント委員会で事故原因等を調査した後、その概要、原因及び改善策を本院のホームページに掲載する等により公表する。

(2)「明らかに誤った医療行為又は管理」は認められないが、医療行為又は管理上の問題に起因して、患者が死亡し、若しくは患者に障害が残った事例又は濃厚な処置若しくは治療を要した事例(医療行為又は管理上の問題に起因すると疑われるものを含み、当該事例の発生を予期しなかったものに限る)。
医療上の事故に関する情報の登録分析機関である日本医療機能評価機構に報告をし、同機構を通じて公表する。

(3)上記(1)、(2)のほか、医療に係る事故の発生の予防及び再発の防止に資すると考えられる警鐘的な事例(ヒヤリ・ハット事例に該当する事例も含まれる)。
医療上の事故に関する情報の登録分析機関である日本医療機能評価機構に報告をし、同機構を通じて公表する。

4.公表を判断するプロセス

インシデントレポート等により報告された医療上の事故等について、リスクマネジメント委員会において速やかに検討を行い、調査委員会等の設置の必要性、検討事例が公表事例に該当するか否かの判断、公表の時期、公表の内容、公表の方法について、リスクマネジメント委員会での意見を踏まえ、病院長が決定する。

5.公表に当たっての留意点

公表にあたっては、次の事項に充分留意をする。

(1)患者・家族等への配慮

公表に際しては、徳島大学保有個人情報の保護に関する規則、徳島大学病院保有個人情報の保護に関する規則、及び徳島大学病院における個人情報の取扱要領等に基づき、患者・家族等のプライバシーに十分な配慮をし、その内容から患者・家族等が特定、識別されないように個人情報を保護するとともに、医療従事者の個人情報の取り扱いにも十分配慮しなければならない。
公表にあたっては、患者・家族等の心情や社会的状況に十分配慮するものとする。

(2)患者・家族からの同意

医療上の事故等の公表に当たっては、患者・家族等の意思を踏まえ匿名化するとともに、第3項(1)の①、②の本院ホームページに掲載する等により公表する場合は、下記の要領により取り扱うものとする。

  • 原則として、患者本人及び家族等から同意を得る。
  • 患者が死亡した場合には、原則として、遺族から同意を得る。
  • 患者が意識不明の場合や患者に判断能力がない場合には、原則として家族等から同意を得る。
    この場合においても、患者の意識の回復その他患者の判断能力が回復したときは、①の原則により、速やかに、本人への説明を行い、同意を得るよう努める。
  • 同意を得るに当たっては、公表することのみならず、その内容についても十分説明を行わなければならない。
  • 同意の有無、説明の内容は、診療記録への記載等により記録する。